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悪徳設計コンサルタントの談合の手口とは(1/3回目)

2024年4月26日 カテゴリ: 業界情報

マンションの大規模修繕工事には多額の修繕積立金が動き、それらをまとめる理事会や修繕委員会では、慎重に計画を進める必要があります。
適正な金額で工事を発注するには、どんなことに気を付ければ良いのでしょうか。
今回は悪徳設計コンサルタントの談合の手口について、当サイト会員の松山マンション管理士より、全3回に分けてご紹介いただきます。

 

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マンション管理士職人の松山です。
先日のNHKでも放映されていました、悪徳設計コンサルタントがいまだに存在しているようです。
ここでいう悪徳設計コンサルタントとは、管理組合の知らないところで大規模修繕工事等の業者からバックマージンを受け取り、本来必要のなかった費用を上乗せして契約させることを言います。
また、本来であれば公正な見積りコンペであるにもかかわらず、価格が操作され、積極的に不適切なコンペにしてしまうコンサルタントを言います。
しかし、一昔前に比べてあからさまではなくなっているように感じます。
言い換えれば、手口が巧妙化してきているようにも思えますが、いずれにしても管理組合の皆様には十分にご注意いただきたいと思います。

 

さて、今回は有料級のその手口の一つをご紹介します。

 

こんな応募条件のあるマンションがありました。500戸以上の大きなマンションでの大規模修繕工事です。

 

【応募条件】
「資本金1億円以上」
「過去〇年間に1億円以上の大規模修繕工事の元請け実績が15件以上」
「経審※Y700点以上」
「〇〇県内に本店又は支店がある」
「過去3年間の分譲マンションの大規模修繕工事に関する平均の年間工事完成高が40億円以上」

 

大きなマンションだから、これくらいの足切りは必要だと思われる方もいらっしゃるでしょう。
しかし、この応募条件で、しかも地域まで絞られた中で、いったい何社が応募してくるでしょうか?

 

この応募条件には、技術力という視点が抜け落ちており、経営的・営業的・地域的なところしか重視されていません。
大きな会社が無条件に良い工事をするのでしょうか?
私は違うと思います。
大きな会社であればあるほど、職人をかかえておらず、下請け→孫請けへと流れていくだけで、余計に経費が掛かります。
また、大きな会社であればあるほど、一次下請けにほぼ丸投げのような形で業務を請け負わせるケースもあります。(足場1社+その他1社のような形態もあります。)

 

従って会社法が改正された今、資本金の額で会社の健全性や規模を図ることはありませんし、経審Y700点というのも、公共工事を受託するにあたっての「負債抵抗力」「収益性・効率性」「財務健全性」「絶対的力量」であり、技術に関する指標ではありません。
公共工事を一切やっておらず、本当にマンションの修繕工事だけで生計を立てているような会社にとっては、経審の評価はそれほど興味がないということにもなります。

 

そして、分譲マンションで年間40億円もの工事完成高を持つ会社というのは、全国でも100社あるかないか、というくらいです。
松山が個人的に集めたデータにおいても、資本金1億円で分譲マンションの大規模修繕工事を積極的に行っている会社は、全国64社でした。
ここから、年間40億円の壁を設けることで、全国35社まで減りました。ここからさらに地域で区切っていくと、15~20社前後となり、経審Y700点で10社前後になっていきます。

 

こうやって足切りをしているように見せかけて候補会社を絞り、あたかも元々多くの業者が存在するように誤認させて、最終的にチャンピオンとして請け負わせる会社を、事前に決めているのです。
その他の会社には「今後また仕事をあげるから―。」ということで、嫌々高い見積もりを書かせ、一番安い会社であったとしても、結果として比較対照が談合相手だけで構成されるコンペであることから、管理組合にとって非常に高い見積りにて契約させられる。という結果となります。
つまり、このコンサルタントを介入させなかったとすれば、足切りをなくして広く応募することで、5,000万円も1億円も安く発注できたかもしれないわけです。

 

しかしながらこの足切り設定を外そうとすると、あるいは管理組合でも独自に見積りを取ろうとすると、悪徳設計コンサルタントは「そこらの有象無象の工事業者ができるような工事ではない。この条件を外すなら(ほかでも個別に見積りを取るなら)うちは責任を持てないので、設計・監理を降りる」と脅かす発言をしてくることがあります。
このような発言が理由なくあったら、談合を疑っていいでしょう。

 

修繕工事とは、分けて考えれば、塗装、防水、シーリング等の複合的な工事であり、そのひとつひとつを見れば、規模の大小はあれど、特別な工事はありません。
材料についてもメーカーがあり、そのメーカーの方法に従って工事をしているだけです。
そのほか、タワーマンションにおいても、単に足場がゴンドラになり、工程管理や安全管理が難しいだけで、塗装や防水等の作業自体は何ら特別なものではないのです。

 

このほか、「どこの業者を入れてもいいですよ」というコンサルタントもあります。
しかし、最終的に最安値でチャンピオン業者を選定させ、工事が始まるとあれもこれもと、予備費を食いつぶすような監理を行い「これはやっておかねばならない必要な工事です」と言って、比較がなされない中で予備費だけが増えていくパターンもあります。
契約さえ取れてしまえば、あとは監理を行っている設計者と工事業者が結託すれば、それはもう何でもできることとなってしまいます。

 

このような事態を防ぐにはどうしたらいいでしょうか?
これに関しては、ぜひ公明正大なマンション管理士等をご活用いただく、業者選定作業は必ず管理組合内部で行う、居住者からも広く募集する、あるいは「マンション修繕入札サイト」を活用・併用するなどがお勧めです。(ポジショントークではありません)

 

大規模修繕工事においては、様々なところからの情報を積極的に取り入れて進めていくことが大切です。

 

 

(松山マンション管理士)

 

※経審 ・・・ 経営事項審査の略。建設業者の経営事項(経営状態、経営規模、技術力など)を審査し点数化することで、公共工事の入札に参加するための資格審査のひとつ。
※会社法 ・・・ 会社の設立・運営・清算などのルールや手続を定める法律。

 

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いかがでしたでしょうか。
実際にアドバイザリーを依頼された理事会では、より詳細な事例を提供し悪徳コンサルタントの注意喚起に努めております。
「うちのマンションの大規模修繕も大丈夫かな?」と気になられた管理組合様は、お気軽にご相談ください。

 

次回のコラム「悪徳設計コンサルタントの談合の手口とは(2/3回目)」もどうぞお楽しみに。