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築50年を超えた中古マンションの今後(3/3回目)

2024年4月12日 カテゴリ: 業界情報

ストック数が右肩あがりのマンション業界ですが、築50年を超えるマンションにおいて、その資産価値や利便性を左右するものは何でしょうか。
最終回の今回は、築50年を超えた中古マンションの今後、運営について留意すべき点や問題の解決策について、当サイト会員の松山マンション管理士よりご紹介いただきます。

 

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~築年数をはじめとする建物の価値~
マンションを高く売るためには、当然ですが、高くても買いたいという人が必要です。
そして、買いたい・住みたいと思う人が多ければ人気となり、買える人(=ローンが組める人)も多く、買った人が多ければ取引事例も多く収集され、そのデータの影響から価格が上昇するでしょう。
築年数がマンションの売買に与える影響を考察してみました。

 

実例を示します。
都内有名駅の駅近で、築50年100戸規模のマンションがあります。
このマンションは借地権で、耐震も旧耐震、そして自主管理です。
(借地権と言っても、管理組合法人が土地を所有しており、管理組合法人が解散すれば所有権になるわけですから間接的には所有権です。しかし総会決議により転売できる状態にあるのは確かであるため、このように記載しています。)
マンションのある住戸をセカンドデベ(リフォーム再販業者)が購入しましたが、エンドユーザー(実需層)がなかなかつかない状況でした。
その理由は、住宅ローンが組めないということにありました。
組めない要因は、借地権であること、旧耐震であること、築年数が50年であるとのことでした。
加えて、建替えしても現在よりも小さくなってしまう(東京都建築安全条例による)ことも要因であったと聞きました。

 

一般的にマンションの購入に際しては、常に比較にさらされています。
例えば似た広さ・立地・間取り・日当たりで3000万円のマンションが2つあるとします。どちらかを選ぶ時、一方は住宅ローン控除が受けられ、もう一方は住宅ローン控除を受けられないとすれば、当然前者が選ばれるでしょうから、後者は必然的にプレミアムとして、市場よりも価格を下げることが求められます。
しかも、住宅ローンは、築年数が経過すればするほど、ローンを組める期間が短くなる傾向にあります。
ある金融機関は築75年を上限にしたローン期間でなければならない、また、あるところは固定資産税上の耐用年数47年を基準にローン期間を設定する等です。

 

この理由はつまるところ「担保価値」です。
住宅ローンが組めない・組みづらいということは、現金一括で購入できる人を探すか、あるいは担保価値相当額まで金額を安くするかであるということとなります。
そのいずれの方法をもってしても、現在の不動産価値が高まることはないでしょう。
ある金融機関においては、当該マンションの価値は「本来であれば土地価格だが、借地権であるし旧耐震なので、ほぼゼロ価値」という烙印が押されました。
このように、高経年マンションにおいては、金融市場における担保価値が低くなり、結果としてローンが組めなくなることによって転売価値が維持できなくなるという悪循環に陥っています。
こと金融市場においては、居住快適性などは担保価値に反映されていないのです。

 

しかし、このマンションでは、そのいずれでもない方法を採用することができました。
なんと、理事長さんが近隣の不動産屋さんに掛け合い、その努力により地元信用金庫を説得し、住宅ローンを特別に組めるようにしました。
その説得に大きく貢献したのは「管理組合法人の活動」、特に理事長さんの意欲でした。
新耐震化への道筋はもちろん、一般的には長期修繕計画だけが作成され、永遠に維持保全を行っていくべきところ、ライフサイクルシミュレーションを作成し(当職作成)、総会決議の承認まで取ったことにありました。
その手法については、耐震診断をしてくれた設計会社に「うちのマンションのコンクリートの寿命を教えてほしい」という依頼をして、築95年程度という回答をもとに、築100年目を建物解体の年として定め、その年に向かって解体のための積立をはじめ、今後50年を他のマンションに負けない居住快適性を維持しようとする計画を定めて、総会決議にて承認させたのです。
現在、借入れを行って、窓サッシの全更新、玄関ドアの全更新が終わったところです。
決して、金銭的には余裕がある訳ではないのですが、今後のマンションはこうあるべきという強い意志があったことから地元信用金庫を動かし、築年数に負けない結果になったのではないかと思っています。
その不動産屋さんとも「もしお宅のマンションで住宅ローンが組めないというお部屋があったら、言ってください。」という良き関係を構築できています。
しかし、さらに幸運だったのは、この購入者が誰もが知る上場企業にお勤めであったことにより、借り入れができたことも大きく貢献したとも仰っていました。

 

人、物に焦点を当てましたが、以上を総括してみると、管理組合の活動はもはや株式会社などと同じく負荷のかかる「事業」と思われます。
管理組合の理事会は、区分所有者の顔色を常に伺いながら、善管注意義務・忠実義務を履行しつつ、法令・総会の決議を遵守し、マンションの居住快適性を向上させ、マンション外部に対して資産価値維持のため管理組合活動を広報して、内外に渉って良好な関係を構築していく必要がある。
築年数を経るにしたがって、これらの負荷が大きくなっていくのがマンションです。
この「事業」を行うために、時間を割き、パワフルに先導していくことができる人材がいないと成立しないのもまたマンションです。
この人材を中から育てていくのか、あるいは外部から有料で招くのか、それともすべてお金で解決するために高い管理費を負担するのか、管理組合がどんなマンションにしていきたいのかを明確にしていき、外部に発信していく、そんな時代が目の前にあると感じています。

 

これからマンションを購入しようとする方は、どうかこういったことまで考慮して、購入を考えていただきたいと思います。

 

余談ですが、筆者はこのような仕事をしていて、「所有するリスク」をひしひしと感じており、むしろ所有することはマイナスでしかない、という価値観を持っているため、賃貸派です。(本当に余談ですね)

 

ここでは書ききれませんでしたが、マンションの「終活」についても、今後触れていきたいと思います。

 

 

(松山マンション管理士)

 

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いかがでしたでしょうか。
築50年を超えるマンション運営について、様々な年代の価値観をまとめ、建物としての価値を維持する事は一筋縄ではいかない難しい問題です。
当サイト担当者及び会員マンション管理士が、豊富な知識と経験で問題解決のお手伝いをいたします。 お困りごとはどうぞお気軽にご相談ください。

 

次回のコラムもどうぞお楽しみに。