管理組合様の声

【大規模修繕工事】 理事長 様 (東京都某マンション)

2017年12月7日 カテゴリ: 01_大規模修繕工事

物 件 名 : 非公開 (東京都葛飾区)                  

築 年 月 : 非公開 (工事実施時:非公開)               

総 戸 数 : 31戸                           

構   造 : 非公開/非公開

内   容 : 大規模修繕工

 

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1.理事長就任からのスタート

当マンションの築後13年目の時、輪番により、管理組合理事長の役が回って来ました。私は、それまでまったく組合活動には近寄らない派でしたが、その時、管理会社から提案された大規模修繕工事の見積りを前にして、俄然、目覚めました。

「この金額は妥当なのか?」と。

この疑問を解くため、ネットや書籍と首っ引きで、世間相場はどうなのか、どうやって業者を探せばいいのか、など、調べまくりました。その結果、管理会社の提案はどうも高そうだということが分かり、複数の工事会社からの見積り取得を支援するサイトがあることも知りました。また、工事発注の方法には、設計監理方式、責任施工方式、CM方式などがあるが、総戸数が31程度の当マンションのような小規模マンションの場合には、オーバーヘッド費用のかからない責任施工方式が現実的であるように思われました。これはまた、形の見えにくい一級建築士による設計監理コンサルティング・サービスのために費用を掛けるということが組合員にはなかなか受け容れにくいのではないかという気持ちが働いたことにもよります。

 

 

2.修繕委員会発足

そこで、先ず、ひとりでどんどん進めるのは避け、管理組合内で広く情報を共有し、コンセンサスを醸成しつつ、堂々巡りの議論に陥らないよう決定事項はその都度、文書化することなどを目指して、修繕委員会を設立しました。折しも当時は、約1年後の2015年10月に消費税率が8%から10%へ引上げられる予定の時期で、実施より半年前の2015年3月末までに請負契約を結べば旧税率が適用となることから、これに合わせてスケジューリングすることにしました。(結果的に消費税率引上げは延期されましたが、おかげで緊張感を持つことで、スケジュールを堅持することができました。)

 

こうして、責任施工方式を前提に見積り合わせを行うことにしたのですが、ここで基本的な問題がありました。工事仕様書がないのです。これでは、同一条件による見積りは得られません。そこで、既に持っている管理会社の見積書の金額部分を消したものを仕様書とすることにしました。このチャッカリ流用方式については、管理会社も見積り合わせに参加可能とすることを条件に、管理会社の了解を取付けることができました。内部的には予定価格として1戸当り100万円以下を目標としつつ、6社に対する見積り合わせを行いましたが、結果、115万円以下にはなりませんでした。そこで、対象社数をもっと増やしてやり直そうということになり、いろいろな所に声をかけて参加してもらい、見積り合わせを行うことにしました。その一つがこの日本システムマネジメントの「マンション修繕入札サイト」です。

 

入札図書もネット上の様々な情報を参考に、よりブラッシュアップした上で、入札参加を募集したところ、17社からの参加表明があり、現地説明・調査の実施を経た後、最終的にその内の15社から見積り提出がありました。予想以上の参加があり、それにより、見積額も安いものから高いものまで大きな幅に広がりました。1戸当り100万円以下もあり、とりあえずは嬉しくなりました。

 

 

3.設計コンサルタントの登場

しかし、ここで大きな問題が発生しました。

1戸当り100万円より安い価格が出て来たのは良いのですが、果たして、品質は大丈夫なのか、その会社に任せても大丈夫なのかという不安が修繕委員の中に漂い出したのです。内訳も含めた会社毎の見積額比較表を作り、各社の工事実績データや財務諸表を見比べてもなかなか決断に至りそうもありません。必要な情報は揃っていても、業者の絞込みは素人には無理そうだという雰囲気が蔓延し出したところで、当初、工事に入ってからの施工監理業務を委託しようと考えていた一級建築士の設計コンサルタントを、業者選定アドバイスの業務も含めた形で前倒して雇うことにしました。

 

しかし、スケジュールはすでにタイトになっており、年末時期に差し掛かったこともあり、設計コンサルタントの選定・契約を急遽押し込むのにはギリギリのタイミングとなっていました。そこで困った時の神頼みとばかり、こちらの「マンション修繕入札サイト」の担当者さんにお願いしたところ、師走の押し迫った中、対応可能な設計事務所を3箇所探してくれて、その3社に急遽見積りと面接をお願いして、年明け早々に設計コンサルタントを決定することができました。この設計コンサルタントには、契約もそこそこに、15社の候補業者の中から面接すべき3〜4社の絞込みについてアドバイスを依頼したのですが、これが後々、良い結果を生んでくれることになったのです。

 

先ず、素人集団ではどうにもならない、あるいは、これとこれにしようと誰かがまとめに入っても、他の人から、本当にそれで大丈夫?という意見が必ず出るような状態だったのですが、設計コンサルタント主導で、情報と論点を整理して行くと、見極めるべきポイントが明確となり、短時間の建設的かつスムーズなディスカッションで、4社が絞り込まれました。

その次は、もっとも肝心の契約候補1社を決める面接の実施です。ここでも設計コンサルタントの助言が我々の目から鱗を落としてくれました。それは、「業者選定の鍵は現場代理人にあり。」ということでした。我々としては、全く未経験の中、選定のための要素はいろいろ考えたのですが、現場代理人の人格や能力が何よりも大事ということで、そこにポイントを絞って注目することができました。実際、4社のプレゼンは、それぞれ、予想以上に洗練されており、りっぱな資料と会社一丸となったチームプレイに圧倒されていては、甲乙付けがたいということになっていたでしょう。しかし、現場代理人に着目して見ていると、明らかな違いが分かりました。結局、会社概要以外の本質的部分の説明を現場代理人本人がほぼ一人で行い通した会社が最も高得点となりました。同時に、その会社が見積額でも最安値だったのは、それ以後の議論が複雑化せずに済んだという意味で幸運でした。

 

暫定的には、この会社を契約先第一候補としたのですが、それでも最安値という点にどうしても不安が残ったので、それを払拭するために、その会社およびその現場代理人が過去に担当した大規模修繕工事の実例を現地視察して確認しようということにしました。視察の結果は、まったく問題なしでした。これをもって、臨時総会に同社との契約締結を上程し議決に至りました。ここまでが本プロジェクトの山であって、あとは設計コンサルタントと施工業者に任せておけば良いだろうとホッとしたものでした。

 

 

4.想定外の事態を乗り越えて

しかし、世の中、そう甘くはありませんでした。工事が始まってすぐ、足場が出来上がって行った詳細調査により、外壁に大量のタイル浮きがあることが判明したのです。これについては、設計コンサルタントおよび施工業者共、建設時の施工不良であろうとの見解であったことから、弁護士との相談を含め、売主といろいろなやりとりをしたのですが、結局、追加費用の補償などに至ることはできず、積立金残金がほとんど底を突くまでの大幅な工事費増額を臨時総会で決議せざるを得ませんでした。

 

このような逆境に陥りましたが、なんとか借金せずに済んだのは、徹底的な競争導入によるコスト削減のおかげであったことをしみじみと感じました。今回の顛末は、当初の管理会社提案の見積額から36%減額できて大喜びしたところ、すぐさま、52%の追加費用の発生で顔が引きつり、ほぼ元の金額に戻ってしまったものの、最悪の事態には至らずホッと胸を撫で下ろしたというお話しでありました。もし、当初の管理会社言い値の金額で工事を始めていたら、工事途中で数千万円単位の赤字に陥り、工事中断するわけにも行かず、グズグズしていれば足場レンタル費用など時間と共に費用が増加していくような状況の中、借金工面に奔走しなければならなかったかと思うとゾッとします。このように、予想外に予備費が嵩むことも想定に入れておくことが必要で、そのためにも予め競争のスキームにより極力費用を抑えておくことが大事だということを思い知らされました。競争は公正であることと、出来るだけ多くの参加者を募ることが大切だと思います。

そのような努力の結果、優秀な設計コンサルタントと低廉かつしっかりした施工業者の両方をこの「マンション修繕入札サイト」を通じて採用できたことは当管理組合にとって誠に幸せな結末であったと思います。その意味で、「マンション修繕入札サイト」には大変、感謝しています。

 

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