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管理組合が心得るべき「障害者差別解消法」改正への対応(3/3回目)

2024年6月21日 カテゴリ: 管理組合

マンションの管理組合も対象となる「障害者差別解消法」の改正・施行について、全3回にわたりご案内してきました。

 

最終回の今回も、当サイト会員の松山マンション管理士にご紹介いただきます。

 

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マンション管理士職人の松山です。

 

「障害者差別解消法」は事業所が対象になりますので、マンションの管理組合以外もマンションを建築する設計業者についても、当然対応が求められます。

 

その他例(設計業)

 障害者差別解消法3_1

 

資料「国土交通省所管事業における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針」より

 

1 障害を理由とする不当な差別的取扱いの基本的な考え方
(1) 趣旨
法は、障害者に対して、正当な理由なく、障害を理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否すること、場所・時間等を制限すること、障害者でない者に対しては付さない条件を付けることなどにより、障害者の権利利益を侵害することを禁止している。

 

(2) 正当な理由の判断の視点
正当な理由に相当するのは、障害者に対して、障害を理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否するなどの取扱いが客観的に見て正当な目的の下に行われたものであり、その目的に照らしてやむを得ないと言える場合である。
事業者においては、正当な理由に相当するか否かについて、個別の事案ごとに、以下に掲げるような障害者、事業者、第三者の権利利益等の観点を考慮し、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要である。

 

○安全の確保
○財産の保全
○事業の目的・内容・機能の維持
○損害発生の防止等

 

事業者は、正当な理由があると判断した場合には、障害者にその理由を説明するもの とし、理解を得るよう努めることが望ましい。
なお、「客観的に判断する」とは、主観的な判断に委ねられるのではなく、その主張が客観的な事実によって裏付けられ、第三者の立場から見ても納得を得られるような「客観性」が必要とされるものである。また、「正当な理由」を根拠に、不当な差別的取扱 いを禁止する法の趣旨が形骸化されるべきではなく、拡大解釈や具体的な検討もなく単に安全の確保などという説明のみでサービスを提供しないといったことは適切ではない。

 

同じく国土交通省の資料より、障害者への「合理的配慮の提供」が義務化されたことに対する、考え方についてみてみましょう。

 

2 合理的配慮の基本的な考え方
(1) 趣旨
法は、事業者に対し、その事業を行うに当たり、個々の場面において、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、社会的障壁の除去の実施について、必要かつ合理的な配慮(合理的配慮)を行うことを求めている。
合理的配慮は、事業者の事務・事業の目的・内容・機能に照らし、必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られること、障害者でない者との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであること、事務・事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないことに留意する必要がある。したがって、例えば、医療行為など実施にあたって高度な専門知識や法令上の資格が必要とされる行為や、食事・排泄等の介助行為などは、国土交通省所管事業の本来の業務に付随するものとはいえず、合理的配慮の対象外と考えられる。
合理的配慮は、障害の特性や社会的障壁の除去が求められる具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものであり、当該障害者が現に置かれている状況を踏まえ、社会的障壁の除去のための手段及び方法について、以下(3)の過重な負担の判断要素を考慮し、代替措置の選択も含め、双方の建設的対話による相互理解を通じて、必要かつ合理的な範囲で、柔軟に対応がなされるものである。さらに、合理的配慮の内容は、技術の進展、社会情勢の変化等に応じて変わり得るものである。
合理的配慮の提供に当たっては、障害者の性別、年齢、状態等に配慮するものとする。
なお、障害の状況等が変化することもあるため、特に障害者との関係性が長期にわたる場合等には、提供する合理的配慮について、適宜見直しを行うことが重要である。

 

次に、事業者は障害者から発せられるどんな意思表示について、対応しなければいけないのかご紹介します。

 

(2) 意思の表明
障害者からの、現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明は、言語(手話を含む。)、点字、拡大文字、筆談、実物の提示や身振りサイン等による合図、触覚による意思伝達など、障害者が他人とコミュニケーションを図る際に必要な手段(手話通 訳、要約筆記等を介するものを含む。)により実施される。
また、知的障害や精神障害(発達障害を含む。)等により本人の意思の表明が困難な場合には、障害者の家族、支援者・介助者、法定代理人等、コミュニケーションを支援する者が本人を補佐して行う場合もありうる。
なお、意思の表明が困難な障害者が、家族、支援者・介助者等を伴っていない場合など、意思の表明がない場合であっても、当該障害者が社会的障壁の除去を必要としていることが明白である場合には、法の趣旨を踏まえ、当該障害者に対して適切と思われる配慮を提案するために建設的対話を働きかけるなど、自主的な取組に努めることが望ましい。

 

「障害者差別解消法」は、事業者は障害者からの要望にすべて応えなければいけないという法律ではありません。あくまで事業者の過重な負担にならない程度に対応する事が基本です。

 

(3) 過重な負担の基本的な考え方
事業者においては、過重な負担に相当するか否かについて、個別の事案ごとに、以下の要素等を考慮し、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要である。

 

○事務・事業への影響の程度(事務・事業の目的・内容・機能を損なうか否か)
○実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約)
○費用・負担の程度
○事務・事業規模
○財政・財務状況

 

事業者は、上記判断にあたっては、当該障害者等との話し合いなどにより、その意向を十分に把握・尊重しつつ、具体的にどのような措置を講じるか検討・調整を行うことと する。
複数の事業者が関係する場合には、それぞれの事業者の負担も十分考慮した上で、提供予定の合理的配慮について、事業者間での引き継ぎなど連携を円滑に行うことが望ましい。
また、同種のサービス等が行政機関等と事業者の双方で行われる場合には、その類似性を踏まえつつ、事業主体の違いも考慮した上での対応に努めることが望ましい。
事業者は、過重な負担に当たると判断した場合は、障害者にその理由を説明するものとし、理解を得るよう努めることが望ましい。
「過重な負担」とは、主観的な判断に委ねられるのではなく、その主張が客観的な事実 によって裏付けられ、第三者の立場から見ても納得を得られるような「客観性」が必要とされるものである。また、「過重な負担」を根拠に、合理的配慮の提供を求める法の趣旨が形骸化されるべきではなく、拡大解釈や具体的な検討もなく合理的配慮の提供を行わないといったことは適切ではない。

 

(4) 事前的改善措置と合理的配慮の関係
法は、不特定多数の障害者を主な対象として行われる事前的改善措置(いわゆるバリアフリー法に基づく公共施設や交通機関におけるバリアフリー化、意思表示やコミュニケーションを支援するためのサービス・支援者・介助者等の人的支援及び障害者による円滑な情報の取得・利用・発信のための情報アクセシビリティの向上等)については、個別の場面において個々の障害者に対して行われる合理的配慮を的確に行うための環境の整備として実施に努めることとしている。
このため、各場面における環境の整備の状況により、合理的配慮の内容は異なることとなる。
合理的配慮を必要とする障害者が多数見込まれる場合や障害者との関係性が長期にわたる場合等には、その都度の合理的配慮の提供ではなく、事前的改善措置の実施も考慮に入れることにより、中長期的なコスト削減・効率化につながりうる点は重要である。
なお、社会情勢の変化に伴い、事前的改善措置と合理的配慮の関係が変わりうることにも注意が必要である。

 

以上が設計業者として「障害者差別解消法」への対応すべき内容となります。

 

最後に
管理組合として「障害者差別解消法」に対応する事項のまとめです。

 

総会出欠票に配慮するべき必要があると思われる事項
耳が遠い マイクの使用・補聴器の使用
聾唖 手話通訳を依頼する・筆談・画面表示・発言の文字化
老眼 大きくした資料を改めて届ける・老眼鏡等の活用をしてもらう・タブレット等の拡大可能なるツールを活用する。
全盲 PDFによる読み上げ・点字による資料作成
足腰 会場手配の配慮(遠い?近い?)

 

これらについて、総会の議案書を配布する前にアンケートを行う必要があるのではないかという考えもあると思います。
しかし、管理組合は、「共同の利益」も求められるため、個別に対応するのであれば、他の組合員(健常者)にも同じく同様のサービス、あるいは資金拠出をしなければならない義務が残ってしまうおそれがあります。

 

様々な状況を想定し、どんな対応が出来るのかを検討し伝えていくことが大切です。
双方が納得いく結果にならずとも、お互いの理解を深め歩み寄ることが今回の法改正のポイントではないでしょうか。

 

今回は以上です。

 

 

(松山マンション管理士)

 

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いかがでしたでしょうか。
「障害者差別解消法」は4月に改正されたばかりの法律です。
本コラムは全3回の連載になっていますので、ご興味のある方は、是非1回目からご覧ください。

 

次回のコラムもどうぞお楽しみに。