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管理組合が心得るべき「障害者差別解消法」改正への対応(2/3回目)
2024年6月7日 カテゴリ: 管理組合
2024年4月1日から改正・施行された「障害者差別解消法」について、マンション管理組合も対象であり、対応が義務化されました。
前回に引き続き、当サイト会員の松山マンション管理士より詳しくご紹介いただきます。
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マンション管理士職人の松山です。
「障害者差別解消法」について、前回はマンションの管理組合も障害者に対し合理的配慮が義務化されており、対応が必要だという事をお伝えしました。
今回は、具体的な対応場面とその方法についてお伝えします。
[総会において合理的配慮が必要な例]
①総会会場の設定 | |
・ | 会場までの道のりについて、高齢者が登りづらい急な階段/坂道/段差があること(バリアの存在) |
・ | 総会会場にエアコンがなく寒い・暑い |
・ | 総会会場のイスが座りづらい(硬い) |
②総会運営について | |
・ | 声が小さく聞こえない |
・ | 総会議案書の文字サイズが小さく見えづらい |
管理組合は障害者から求められたら、合理的配慮について「建設的対話」をする義務があります。(「できません」は不可です。)
一方絶対に何かをしなければならないというわけではなく、建設的な対話をしていくことで、障害者側にも管理組合側の事情を理解してもらうことが重要です。
[建設的対話の具体例]
建設的対話とは? | |
・ | 障害者側がOKであれば、メールや書面での情報のやり取りもOK。 |
・ | 直接の対話を求めるのであれば、必ず対話でなければならない。 |
・ | 丁寧な説明をすることが求められる。 |
・ | どうして配慮が必要なのか。どうしたらいいのかを対話していく。 |
・ | 管理組合側の過重な負担がかかるときもあり「納得」まではできなくとも、相互に「理解」できるポイントを探る。 |
また「障害者差別解消法」では障害を理由とする「不当な差別的取扱い」を禁止しています。
下記のような対応は行わないように注意しましょう。
ただし、下記のような場合は「不当な差別的取扱い」にはなりません。
[不当な差別的取扱いにならない例]
上記を踏まえ、管理組合における対応場面と解決までのプロセスについて考えてみましょう。
[解決までのプロセス]
①総会会場の設定 | |||
・ | 会場までの道のりについて、高齢者が登りづらい急な階段/坂道/段差があること(バリアの存在) | ||
↓ | |||
総会会場の設定について「建設的な対話」を行う。 | |||
・ | 階段を無くす → 環境整備に相当し、対応は物理的に不可能。 | ||
・ | 会場を変える → 逆に遠くなることによって参加できない障害者が出てくる。 | ||
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事業者として上記を伝え、階段があることを前提に「何にお困りなのか」を聴取。 | |||
・ | 介助があれば、上がれる場合 | ||
→ | 介助をする。介助方法が特殊なら、日常から介助をしてくれている方を個別に依頼してもらう(費用は応相談) | ||
・ | 介助があっても、上がれない場合 | → | 1階で総会の様子を聞けて、意見聴取等ができるような環境を整える。(タブレットを準備する、オンライン会議を整える 等) |
→ | 障害者側に代理人を立ててもらう。 | ||
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②総会運営について | |||
・ | 声が小さく聞こえない(耳が遠い/聾唖者である) | ||
↓ | |||
総会会場の設定について「建設的な対話」を行う。 | |||
(聾唖者の場合、建設的な対話は不可能であり、その場合には聾唖者側が手話通訳者を個別に依頼して対応する) | |||
・ | できるだけ大きな声で話す、マイクを使用する(マイクの購入や設置、設定が過重な負担かどうかを相互に理解。健常者である組合員より、金員拠出の理解が得られない可能性があるが、その場合は「正当な理由」にあたる。) | ||
・ | 筆談や、発言の文字化、画面に映し出す(プロジェクター等の使用)の配慮をする。 | ||
・ | 障害者側は補聴器等の医療機器を活用する。 | ||
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②総会運営について | |||
・ | 総会議案書の字体ポイントが小さく見えづらい/全盲である | ||
↓ | |||
総会会場の設定について「建設的な対話」を行う。 | |||
・ | A4ではなく、特別にB4サイズで資料を提供する/資料の色を濃くして印刷する。点字で資料を作成する。(印刷費・作成費について過重な負担かどうかを相互に理解。健常者である組合員より、金員拠出の理解が得られない可能性があるが、その場合は不当な差別的取扱いに該当しない「正当な理由」にあたる。) | ||
・ | プロジェクター等、画面に映し出す等の配慮をする/PDFの読み上げ機能などを取り入れる。 | ||
・ | 障害者側は老眼鏡等を活用する、タブレット等の拡大可能なシステムやデータを活用する。 |
このように、結果として結論が出なくてもいい=「対話した事実」が重要であり、建設的な対話はお互いが理解を深めるための大きなポイントになるのです。
次回はその他の例として設計業における「障害者差別解消法」についてご紹介します。
今回は以上です。
(松山マンション管理士)
資料の出典 | : | 内閣府PDF「障害者差別解消法が変わります!令和6年4月1日から合理的配慮の提供が義務化されます!」 |
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いかがでしたでしょうか。
次回は「管理組合が心得るべき障害者差別解消法改正への対応(3/3回目)」の最終回です。
どうぞお楽しみに。