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悪徳設計コンサルタントの談合の手口とは(3/3回目)

2024年5月17日 カテゴリ: 業界情報

マンションの大規模修繕工事における設計コンサルタントは、管理組合様の良き相談相手であるべき存在ですが、中には「悪徳」と言われるものも存在します。
管理組合として、どのような防御措置を取ればよいのでしょうか。

 

悪徳設計コンサルタントの談合の手口について、当サイト会員の松山マンション管理士より全3回に分けてご紹介いただきました。今回はその最終回です。

 

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マンション管理士職人の松山です。
さて、悪徳設計コンサルタントの談合の手口の3回目です。

 

今回も有料級のその手口の一つをご紹介します。

 

設計の内訳書に書かれている数字について
「外壁塗装 ○○塗装 ○○㎡」
「タイル補修工事 ピンニング補修 ○○㎡」
という記載は当たり前にあります。むしろ、ない方が問題です(笑)

 

ここでの問題はその「数量」です。
数量は図面などから積算し算出されますが、この数量を膨らましてくる設計コンサルタントがいます。
特に第1回目の大規模修繕工事では、過去の履歴がありませんから、この㎡数が正しいのかどうか、誰にも分からないということとなります。

 

当然、ここで多めに㎡数を算出しておけば工事費を高めることができ、やらない工事が出てくるわけですから、その分バックマージンを作り出す原資となります。

 

これを防ぐにはどうしたらいいでしょうか?
いくつか手法があります。
ひとつは3Dモデリング(3DCAD=3次元のコンピューター支援設計ソフトウェア)を使用することです。
3Dモデリングをすることで、他社ソフトメーカーが積算をしますので、一応の信頼が図れます。仮に検証しようとすれば、その場でここが何㎡、ここが何mと疑問に即座に回答されることとなりますので、ぜひランダムに場所を指定して、数量を検証してみてください。ついでに、実際の場所で計測してみるのも大切です。

 

次に、施工業者から設計コンサルタントへの質疑に頼ることも有効です。
多少の誤差は仕方がないとして、見積りを出す際に「どのように計算したら、この数量になるのか?」という質疑を施工業者から挙げてもらうことも有効です。

 

最後に、数量が正しかったとしても、塗装をしないで未施工でバックマージンをねん出するような会社もあります。 これを避けるには、使用量の確認をすることです。
塗料であれば塗料缶の納品書や出荷証明書と空き缶、そして納品書で入荷された数、使用された数を確認することができます。
ここでも、他の現場で使用したものを持ってきて写真だけ撮影し、実際には使わない等のことをさせる、著しく悪質な場合もあります。
その場合には、外壁塗装や防水等をランダムに箇所を選定し、塗られた塗料の厚みを計測することで、不正かどうかを検証することができます。
また、必ず缶にはロットNo.が記載されていますので、納品された缶のロットNo.と空缶のロットNo.を照合する作業をしてもいいでしょう。(毎週土曜には管理組合の役員さんや委員さんがチェックすることも有効ですね)

 

そもそも、そんな信頼のおけないコンサルタントを選定しない、ということが最も重要なわけですが・・。
コンサルタントの調査・診断、設計費用が他社に比べて著しく安い、作業のわりに人工数※が目立って少ない等の、見積りに疑問点があるコンサルタントには注意が必要です。

 

ここで、実例を見てしましょう。
以下は、東京都のある250戸のマンションでの実際の見積り比較です。

 

悪徳設計コンサルタントの談合の手口とはの比較表

 

工事監理は、工期も決まっていないため、仮の期間と工事内容を定めて、参考として試算してもらっています。工事監理部分はあまり気にしないでください。

 

私が業務を行う場合には、基本計画と実施設計を分けて見積りを依頼していますが、会社によっては基本計画のところで数量積算をしたりすることがあるため、基本計画と実施設計を合算した人工数で、見積り分析をしています。

 

そうすると―わかりますよね。
前半の公募1~5は、設計にかかる人工が10人工前後であることが・・。
他の会社では20人工以上かかるはずのものが、なぜ10人工程度で完了できるのか・・?

 

それはAIを使っているからでも、非常に優秀かつスピードの速い従業員を抱えているからでもありません。 単に外注しているからです。
しかも、それが単価に跳ね返ってこないのは、癒着している建設会社を使っているからです。
つまり、社内で積算できる部門がないこと(あるいは、積算するつもりがそもそもない)を示しています。

 

特に、実施設計を2人工で仕上げますなどという公募2,3,4については特記仕様書や図面を作成する気すらないと考えられます。
いくらプロでも、2日間だけで、250戸のマンションの特記仕様書や図面が作成できると思いますか?
その判断は、皆様にお任せしたいと思います。

 

さて、結果としてこのように市場価格の半額、あるいは7割程度でコンサル契約を受託し、受託してしまえば後はしめたもの。いかようにも操作することができ「バックマージンをいくら取ろうかな」と考えるわけですね。
そのためにも、コンサル契約は安く、良く見せ、受注率を上げることに執心していますので、プレゼンが上手です。
こんなのは素人さんが分かる訳ありません。本当にひどい業界です。

 

さらに付け加えると、この公募1~5には「従業員が50名前後いる」という設計事務所も含まれています。その経営者の視点で見てみましょう。
この従業員1名あたりの年収を、仮に500万円だとします。この物件を取っても、約3年かけて約400万円の売上、つまり年間133万円です。
会社を維持する諸経費の率を概ね20%、利益率を20%とすると、残りは約80万円です。これが従業員の給料になるのだとすると、50名の年間人件費:2億5,000万円となり、250戸の物件を年間312件取らなければならなくなります。
そうすると、全従業員で割り振ったとしても、1名につき年間6件を担当することとなります。担当するためには、このように公募で取っていくため営業行為も必要です。
こんな経営、まず不可能ですよね。
そうすると、他にも何か売り上げがあるとか、収入があると考えるのが普通です。
また、新築もやっているのではないか?と考える方もいらっしゃると思いますが、新築をやっている方々はあまり改修の業界に来ません。
一級建築士さんの業界の中でも「新築と改修は全然違う=別物」と言われており、ノウハウがないため、あまり新築の方が改修にくることはないと聞いていますが、念のためそういった疑問がある場合には、ヒアリング時に財務諸表を3年分取り寄せて、質問してみてください。
以上を踏まえ、悪徳設計コンサルタントには、十分ご注意ください。(どう注意しろというんだ・・という声が聞こえてきそうですが)
ちなみにこの物件では、ヒアリングに右からの2社を選定し、結果として住民推薦の会社さんが受託されました。

 

人工数について詳しく説明しましたが、大きく実績のある設計事務所が有能かというとそうではないこともあるため、人となりをしっかりと見極めていきましょう。
私が見るに、この「マンション修繕入札サイト」に所属している設計コンサルタントには、上記のような悪徳なコンサルタントは所属していませんので、相見積りする際は選択肢として加えていただくとよろしいかと思います。
あとは・・管理組合役員様のもつ「常識」「良識」をもって、その目で判断してください。
それに不安を感じる場合には、マンション管理士にもお声かけください(ポジショントークですみません)。

 

こんなに神経質にならなければ、皆様の大切な財産を守れないのが現状です。
マンションの大規模修繕工事がいかに汚染されているか、本当に呆れますし、疲れますね。

 

今回は以上です。

 

 

(松山マンション管理士)

 

※人工(にんく)数 ・・・ 行う工事に対して、作業員が何人必要なのか、どれくらい時間が必要なのかを数値化したもの。

 

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いかがでしたでしょうか。
皆様の大切な資産であるマンションを守るために、経験豊富な専任担当者とマンション管理士、一級建築士と工事業者が一丸となってサポートいたします。
どんな小さな疑問にもお答えいたしますので、お気軽にお問い合わせください。

 

次回のコラムもどうぞお楽しみに。