マンション管理士のコレ聞いて!!
管理組合運営上、建設的な議論のために ~詭弁に負けるな!チェリーピッキング~
2024年3月22日 カテゴリ: 管理組合
理事会や総会における活発な意見交換は大歓迎ですが、中には会を混乱させるような発言も見受けられます。
様々な意見を取りまとめるために、どんなことに気を付ければよいでしょうか。
今回もサイト会員の松山マンション管理士より、管理組合運営のための心構えについてご紹介いただきます。
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管理組合運営、特に理事会を運営していると、こんな意見を言う人がいます。
組合員: | 「私のところには、理事会が現在進めている事業について、おかしい、反対だという声が上がっている。」 |
組合員: | 「私のところに、この事業を進めるべきではないという相談が多く寄せられている。」 |
組合員: | 「理事会がどうもおかしなことをしようとしている、という声が私の耳に入ってくる。」 |
このような意見を理事会に強く述べて、理事会の事業を進めさせない、あるいは大幅な軌道修正をさせようとする方がいらっしゃいます。
このような発言があると、その方が修繕委員長や自治会長等のように組織の中心的な役職の方でなくとも、まるでこの発言者が「多くの組合員の代弁者なのではないか?」という印象を聞いた側に与えます。
理事会側としては、このように持ってしまった印象に対して、反論ができない状況に陥り、事業を停止したり、軌道修正したりを余儀なくされるケースがあります。
しかし、よく考えてみてください。
この発言者は何の役職も専門性もない組合員(とはいえ、一般的な組合員よりは面倒見がよく、マンションのことを知っている)であると推察しますが、そのようなごくごく普通の組合員に、理事会の事業を理解し、明確な反対意見を述べる組合員がこぞって相談し、意見表明をするか、ということに疑問があります。
また、本当に反対や事業停止・事業変更を求める声のみなのか、積極的に賛成するという声はなかったのか、その点も疑問です。
仮に上記のような状況があったとして、このように自身の意見に都合のいい事例のみを抽出することを「チェリーピッキング」と言います。 チェリー=さくらんぼ、熟れておいしいさくらんぼのみをピックするという意味で、都合のよいものだけを抽出した意見を述べて自身の意見を通そうとする「詭弁術」です。
通常、管理組合が組合員から意見を聴取する際には、アンケートやヒアリング等を実施し、回答数nに基づき、どれほどの方が賛成し、または反対し、または違う意見があるかどうかを収集・分析し、基礎資料として活用したうえで検討を進めていきます。
その場合には、積極的な意見も消極的な意見も、ともに掲載され、結果が報告されることが多いと思われます。
しかし、チェリーピッキングをするような発言者は、そういった正規の手続きを踏まず、その不適切な情報収集によって、理事会の検討を迷走させることがよくあります。
このような発言があった場合は、以下のように対応するとよいでしょう。
対応: | 「具体的に、いつ、どこで、どなたの、何名からご意見を聞き、何名がそのような意見なのでしょうか?」と聞く。 |
対応: | 「具体的に、どのような設問をどのような環境下でお尋ねになり、どのようにお答えになったのかを正確に教えてください」と聞く。 |
対応: | (理事会で)「ではアンケートを実施しますので、なんとお尋ねしたのかの設問を教えてください」と聞く。 |
対応: | 「では、その情報収集の結果を紙でまとめて提出してください」と依頼する。 |
そうすると、概ね「個人情報があるので、教えられない」「回答者からは理事会には伝えないでくれ、と言われている」「多すぎて覚えていない」「名前を知らない」「忙しい」等で、拒絶されます。
そして、ほとんどの場合、理事会の皆様は議論について責任を負いますが、こういった発言者は、自身の意見に対して責任を持たない場合が多くあります。
従って、具体的な回答が出ない場合・代替案も出されないような場合には、理事会として対応するに値しないとして、その意見を「貴重な意見」として取り扱い、神棚に飾っておくのもよいでしょう。
また既述のとおりアンケートを実施して、多数派がどちらなのか議論を上塗りしてもよいでしょう。
もしくは、対応が面倒だと思われる、あるいは少数意見も貴重なものとして取り扱おうとする理事会の姿勢であったとすれば、その発言者名を意見の発案者として公表して責任を負わせ、理事会で検討もしくは委員会等を立ち上げさせる等して、具体的に対応させることが望ましいと言えます。
その理由というのは、理事会だからと言ってえらい・権力がある、というわけではなく、会社のような経営者と株主関係とは異なり、同じ地位の組合員であるからこそ、すべての組合員には責任を持った発言をしていただく必要があると考えるからです。
安全なところからの、理事会へのやじはするべきではありません。当然、反対意見や修正意見を強く述べるのであれば、代替案を推進させ、その結果にも責任を負っていただくべきと考えます。
今回は以上です。
(松山マンション管理士)
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いかがでしたでしょうか。
大きな声に引っ張られることなく、組合員には責任を持った発言を促すことが、スムーズな管理組合運営に大切ではないでしょうか。
次回もどうぞお楽しみに。