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高くてもあきらめない! やりくり上手な耐震化計画(前編)

2023年11月24日 カテゴリ: マンション管理情報

地震列島とよばれる日本において、大規模修繕時に耐震化をご検討される管理組合様は多くいらっしゃいます。今回は当サイト会員の松山マンション管理士より、耐震化の判断基準や取り組み方について実例を交えて前編・後編に分けてご紹介いただきます。

 

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私の顧問先マンションでは、旧耐震のマンションさんがいくつもあります。
当然、新耐震基準に合わせた耐震化をしなければ、資産価値が著しく高まりませんので、耐震化について検討がなされています。

 

耐震化の手順としては、

 

①耐震診断

②耐震補強設計

③耐震補強工事

 

という段階を踏んで行います。

 

そして、多くの自治体では、それらに補助金が出されています。
補助金が出される条件として、このすべてにおいて「第三者機関の評定を取得すること」が必須となります。
この第三者機関の評定というのは、耐震化自体、新耐震基準に合わせる必要がある、つまり、X方向、Y方向ともにIs値(※)0.6以上を満たすものでなければならない、という基準がある関係で、第三者のお墨付きが必要になる、ということです。

 

※Is値

Is値(Seismic Index of Structure)とは、建物の耐震性能を表すための指標のことです。
Is値が大きいほど耐震性が高いといえます。

 

「上塗基準」と「壁芯基準」

 

耐震診断については、その内容に一次診断、二次診断、三次診断と三段階存在し内容がより詳細になっていいきます。それに伴い費用も段階的に上がって三次診断が一番高くなっています。

 

具体的に、

一次診断は机上で計算が可能な、比較的簡易的な診断といわれています。

二次診断は、柱・壁の強度、そして鉄筋の粘り強さを考慮して算出する診断です。実施するためには、コンクリートのコアを各階数か所ずつ取り出す必要があります。

三次診断は、二次診断に加えて、梁をも考慮し、より高度な計算に基づく診断となります。

 

上記のように、それぞれ診断基準が異なることからマンションによっては、三次診断よりも二次診断の方がよい結果になることもあります。
しかし第三者機関の中には「三次診断でなければ評定は出せない」という所もあって、そういった第三者機関を忌避し「二次診断でも評定を出せます」という第三者機関探しから始める場合もあります。
その場合、段階的に費用が異なりますので節約できます。

 

次に、耐震補強設計は、耐震診断の結果に基づき、どのような工事をすればIs値0.6以上を維持できるのか、という具体化をするのが耐震補強設計です。
多くは、耐震スリットの新設、壁の増し打ち、外部外枠材の取り付け等があります。

 

ここでのポイントですが、タイトルにあるとおり建物全部をIs値0.6化にすることが目的ではありますが、これを実現しようとすると、数億円の費用がかかることが多く、大規模修繕工事の数倍のお金がかかると言われています。
これだけのお金がかかるなら、とてもできない!となり、耐震化が一歩も進まないということがよく見られます。
しかし、せっかく耐震補強設計をしたのだから、一歩でも、少しでも耐震補強工事をすることがとても大切です。

 

 

(松山マンション管理士)

 

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次回は「高くてもあきらめない!やりくり上手な耐震化について」具体的な実現方法をご案内いたします。
どうぞお楽しみに。