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マンション管理組合と地震保険 ~入るべきか、見送るべきか~(2/3回目)
2023年11月10日 カテゴリ: マンション管理情報
2回目の今回は、前回に引き続き当サイト会員の松山マンション管理士監修のもと、マンション地震保険の「対象」や「損害基準」に関する内容を紹介します。
地震保険への加入、非加入を検討中の管理組合様へ、少しでもお役に立てたら幸いです。
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3 地震保険加入対象
マンション地震保険は「居住用建物の共用部分のみ」に付加できます。
従って、居住用建物に付随する事務所、店舗等の居住空間以外の部分については保険加入対象外となるので注意が必要です。 ※但し、災害時は調査ができないとの理由から、保険会社によっては上記を考慮しないケースもあります。
ケース1)共用バーの場合
→保険会社によって判断が異なります。共用施設色が強いか、店舗としての独立要素が強いかが判断
基準となります。
ケース2)住居をもっぱら事務所として利用している場合
→保険に加入することは出来ますが、共用部分の床面積は除外になり保険適用にならないため、無駄
になってしまいます。
上記のほかに、管理組合所有の「動産」は保険対象にはなりません。
またガラス割れ、設備の損傷、漏水、ドアが開かなくなった等の被害でも、一切建物の被害として認められません。
4 損害程度に関する基準(財務省公表より)
損害程度 | 基 準 |
全損 | 地震等により損害を受け、主要構造部※(土台、柱、壁、屋根等)の損害額が、時価額の50%以上となった場合、または焼失もしくは流失した部分の床面積が、その建物の延床面積の70%以上となった場合。 |
大半損 | 地震等により損害を受け、主要構造部※(土台、柱、壁、屋根等)の損害額が、時価額の40%以上50%未満となった場合、または焼失もしくは流失した部分の床面積が、その建物の延床面積の50%以上70%未満となった場合。 |
小半損 | 地震等により損害を受け、主要構造部※(土台、柱、壁、屋根等)の損害額が、時価額の20%以上40%未満となった場合、または焼失もしくは流失した部分の床面積が、その建物の延床面積の20%以上50%未満となった場合。 |
一部損 | 地震等により損害を受け、主要構造部※(土台、柱、壁、屋根等)の損害額が、時価額の3%以上20%未満となった場合、または建物が床上浸水もしくは地盤面より45cmをこえる浸水を受け、建物の損害が全損・大半損・小半損に至らない場合。 |
※主要構造部とは
構造耐力上主要な部分 基礎、基礎ぐい、壁、柱、小屋組、土台、斜材(筋かい、方づえ、火打材その他これらに類するものをいう。 )、床版、屋根版又は横架材(はり、けたその他これらに類するものをいう。(建築基準法施行令第1条第3号 三)
上記の他に、100cmを超える地盤沈下や約1.2度を超える傾斜(沈下を伴う)でも「全損」と判断されます。ただし、敷地内で地面だけの沈下があった場合は評価対象外となります。
また、建物と建物とをつなぐエキスパンションジョイントや、免震構造などに用いられる免振装置も評価対象外になります。
5 専有部分と共用部分の関係
専有部分の被害状況が、共用部分の被害状況よりも良くなることはありません。
共用部分(全損) | ≦ | 専有部分(全損) |
共用部分(半損) | ≦ | 専有部分(全損か半損) |
共用部分(一部損) | ≦ | 専有部分(全損か半損か一部損) |
共用部分(無責) | ≦ | 専有部分(全損~無責のいずれか) |
ただし、共用部分と専有部分の地震保険の会社が異なる場合、違う評価が出る可能性もあるので、管理組合としては専有部分の地震保険の統括が必要になってくることは否めません。
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今回は以上です。
次回の「マンション管理組合と地震保険 ~入るべきか、見送るべきか~(3/3回目)」もお楽しみに。