マンション管理士のコレ聞いて!!
マンション管理組合と地震保険 ~入るべきか、見送るべきか~(1/3回目)
2023年11月3日 カテゴリ: マンション管理情報
1923年9月1日発生の「関東大震災」から100年、日本は地震列島と呼ばれ、しばしば大震災に見舞われて来ました。
大地震は過去の話ではなく「南海トラフ地震」のように何時起きても不思議ではないのが現実です。
そこで今回は松山マンション管理士監修のもとマンションの地震保険に関する情報にスポットを当てました。
地震保険への加入、非加入を検討中の管理組合様へ、少しでもお役に立てたら幸いです。
=========================================================
1-1 地震保険で対象となる災害
地震、噴火、津波を直接または間接の原因とする次の災害を補償対象とします。
①火災 ②損壊 ③埋没 ④流出 ⑤地滑り ⑥融雪洪水 ⑦水災
1-2 地震保険の時間的定義
地震保険は「72時間基準」とされており、72時間以内の余震等による事故は、全て1事故として取り扱われます。
ケース1)地震発生時揺れによる建物被害、その24時間後余震による建物被害発生した場合。
→72時間以内は何度余震があっても、1事故として扱われます。
ケース2) 地震が発生し停電、その36時間後に通電による火災が発生した場合。
→72時間以内は地震が遠因の火災であっても、地震による火災となることがあります。
因みに地震(震度6以上)で第三者に被害を与えた場合には、法的な損害賠償義務はありません。
すなわち個人賠償責任保険・施設賠償責任保険が使えないので注意が必要です。
例)上階で熱帯魚を大きな水槽で飼っており、その水槽が倒れ、その水が下階に漏水した場合、
震度5強程度では上階の居住者の責任を認め、個人賠償責任保険が使えるとの裁判例があります。
1-3 マンション地震保険の契約者
マンション地震保険は 共用部分の保険 と各住戸 専有部分の保険 に分かれており、共用部分の保険はマンションの管理組合が、専有部分の保険はマンションの所有者が個人で加入するのが一般的です。
ただし、管理規約にその記載がない場合、管理組合で加入することはできません。
2-1 地震保険で設定できる保険額
火災保険金額の30%~50%の範囲 でしか、地震保険金額は設定できません。
マンション地震保険の計算方法
再調達価格※1 × 付保割合※2 |
= |
火災保険金額 |
火災保険金額の30% ~ 50% |
= |
地震保険金額 |
※1再調達価格:マンションをもう一度建て替えるのに必要な額。
※2付保割合:保険契約に際し、評価額に対し実際に保険をつける割合。
2-2 地震保険で支払われる保険金
地震保険で支払われる保険金は、損害の程度により下表の通りとなります。
損 害 程 度 | 保 険 金 |
全損(時価の50%以上) | 地震保険の保険金額の100% |
大半損(時価の40%~50%) | 地震保険の保険金額の60% |
小半損(時価の20%~40%) | 地震保険の保険金額の30% |
一部損(時価の3%~20%) | 地震保険の保険金額の5% |
損害程度の判断基準は「時価」であるので、築年数の高いマンションは、加入時保険金額の設定に注意が必要です。
ケース1)再調達価格5億円(共用部分60%、専有部分40%)、付保割合80%のマンションの場合。
5億×60%=3億円(共用部分の評価額) | × | 80% | = | 2億4,000万円 |
再調達価格 | 付保割合 | 火災保険金額 |
2億4,000万円 | の 30%~50% = | 7,200万円~最大1億2,000万円 |
火災保険金額 | 地震保険金額 |
上記を踏まえ、地震保険に入る際は火災保険の 付保割合を高めに戻すこと が必要ですが、それでも再調達価格5億円の建物が全壊した場合、 地震保険で立て直すことは叶いません。
=========================================================
今回は以上です。
次回の「マンション管理組合と地震保険 ~入るべきか、見送るべきか~(2/3回目)」もお楽しみに。