大規模修繕工事のしくみ

大規模修繕工事とは、マンションの快適な居住空間を確保し、資産価値を維持するために行う修繕工事や、必要に応じて建物及び設備の性能向上を図るために行う改修工事のうち、工事が大規模、工事費が高額、工事期間が長期にわたる等をいう。(国土交通省のガイドラインより)具体的には、長期修繕計画に基づいて行われ、おおよそ12年~15年の周期で行うものです。 ここでは、大規模修繕工事についてご説明しますが、基礎知識として、長期修繕計画、修繕・改良・改修工事の違い、工事方式についてもご説明いたします。

 

 

①【長期修繕計画】

長期修繕計画とは、マンションの経年変化により部材や設備が劣化する事にあわせ、約25年~30年先までの毎年ごとの計画的に行うべき修繕とその費用を示すものです。

長期修繕計画は、作成時点において、計画期間の推定修繕工事の内容、時期、概算 の費用等に関して計画を定めるものです。 推定修繕工事の内容の設定、概算の費用の算出等は、新築マンションの場合、設計 図書、工事請負契約書による請負代金内訳書及び数量計算書等を参考にして、また、 既存マンションの場合、保管されている設計図書のほか、修繕等の履歴、劣化状況等 の調査・診断の結果に基づいて行います。 したがって、長期修繕計画は、将来実施する計画修繕工事の内容、時期、費用等を確定するものではありません。また、一定期間(5年程度)ごとに見直していくことを前提としています。

  (国土交通省 長期修繕計画作成ガイドラインより抜粋)

長期修繕計画は管理会社が作成することが一般的ですが、稀に第1回目の大規模修繕工事で修繕積立金不足になる長期修繕計画が作成されたり、「不要な工事が長期修繕計画に盛り込まれた」ケースもあります。

従って、長期修繕計画は、大規模修繕工事を行う上でとても重要なものであると言えます。加えて、5年程度ごとに見直しを行うことで計画修繕工事の内容、時期、費用等の精査を行うことが必要です。

また、ガイドラインにはこのような記載もあります。

管理組合は、長期修繕計画の作成及び修繕積立金の額の設定に当たって、総会の開催に先立ち説明会等を開催し、その内容を区分所有者に説明するとともに、長期修繕計画について総会で決議することが必要です。また、決議後、総会議事録と併せて長期修繕計画を区分所有者に配付するなど、十分な周知を行うことが必要です。

  (国土交通省 長期修繕計画作成ガイドラインより抜粋)

管理組合は長期修繕計画の作成(見直し)及び修繕積立金の設定(改訂)に当たって、区分所有者への周知の行うことが必要と記されています。

 

 

②【修繕・改良・改修工事の違い】

次に「修繕/改良/改修工事」の違いについて説明いたします。

 

●修繕
部材や設備の劣化部の修理や取替えを 行い、劣化した建物又はその部分の性能・機能を実用上支障のない状態まで回復させる行為。

●改良
建物各部の性能・機能のグレードアップ(マンションを構成する材料や設備を新しい種類のものに取替えることや、新しい性能・機能等を付加することなど)。

●改修
修繕及び改良(グレードアップ)により、建築物の性能を改善する変更工事。

 

20140711 国土交通省 大規模 資料

(国土交通省 「改修によるマンションの再生手法に関するマニュアル」より抜粋)

 

マンションの経年に伴う劣化や不具合に対しては、大規模修繕等の計画修繕を適切に実施していくことが必要です。また、高経年マンションでは、質及び価値を長持ちさせていくために、修繕による性能の回復に加えて、現在の居住水準・生活水準に見合うようマンションの性能をグレードアップし、住みよいマンションにしていくことが重要になります。

 

 

③【工事方式について】

大規模修繕工事において複数の工事方式がありますが、ここでは代表的な「設計監理方式」と「責任施工方式」について説明いたします。

 

●設計監理方式
設計監理方式は、大規模修繕工事の為の調査診断や改修設計、工事の仕様固め、施工会社の選定アドバイス等を、マンション改修を専門にしている一級建築士にお願いして、実際の工事の監理をしていただく方式です。管理組合としては、コンサルタントが入る事により、工事の技術的な事を含めた専門的な話について、管理組合の代理として施工会社に対して行ってもらえるメリットがあります。ただ、コンサルタントを入れる場合は当然費用が発生しますので、その分の費用負担を考えなければなりません。

●責任施工方式
責任施工方式は、前述のコンサルタントを入れずに、大規模修繕工事の調査診断から工事の仕様固め、実際の施工までを工事会社に任せる方式です。一級建築士によるチェックが無い分、工事仕様に無駄が多かったり、施工した結果、実数精算が多かったりと、工事会社によっては工事金額が高くなる場合があります。ただし、信用できる工事会社が見つかれば、コンサルタント費用を見なくて良いので、その分費用は安くなります。

 

 

どちらの方式でも一番大事なのは、「公平・透明」に施工会社を選定する事です。

 

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